実は、かなり期待されて入団したハル。
講師の先生や先輩たちからどの楽器も凄く上手だと大変褒めて頂き、代表のアユさんからも「ハルはその内に管のセクションリーダーをやるような子になると思う」と入団前に言われたりしていました。
入団させるためのお世辞だった?
いえ、ユキは一切そういった事は言われていないから……
その時は多分ちゃんと本心だったと思うけれど…。今はどうか分かりません。
まぁそんな事があって、本人の自己評価も高かったのです。きっと俺は上手いはず、という謎の自信。
なので、思ったような音が出ない今の状況が面白いはずもなく、ハルは家で猛烈に練習していました。
クラリネット初心者向けの動画を調べてその方法を試したり、先生から言われた口の形を意識したり、姿勢(ハルが苦手なやつ)を気をつけて、楽に息を吹き入れる練習をしたり。
この一週間で、驚くほどメキメキ上達。
まだピャー音もだいぶありますが。
土曜日の練習でハナ先生から、「ハル、家でかなり練習したね!凄くスムーズに音が出るようになった!」と驚かれていました。
やれやれ、良かった…。
どうやら、コツを掴んできたようです。
運指も慣れてきて、ドレミの歌(といってもクラはベー管だからドレミじゃないけど)を吹いたり出来るようになってきました。
曲を吹けるようになってくると、かなり楽しいみたいです。
練習の途中、ハナ先生が席を外す時間があり、ハルとユキが自主練習をしていましたら、同室でトロンボーンの子の指導をしていたクロダ先生(ダンディな男性)がハルの所へやってきました。
おもむろに始まるクラリネットのご指導。
「口の形をまずへの字にして、そのまま顎をこうしてごらん。目線は下じゃなくて上。天井を向くぐらいでも良い。下を向いて良い音は絶対に出ないから」
少しビックリしながらも指示に従うハル。
そして吹いてみます。
「ほら、良い音が出た!じゃあ次はこうしてみようか」
親切に教えてくれるクロダ先生ですが(トロンボーンの子を放ったらかして…)、説明が早口で少し難しいのです。
「アントニオ猪木をイメージして!志村けんのアイーンでもいい」
いや、先生…
ハルは世代的にどちらも分かりませんて…
ハナ先生が戻ってきてから、クロダ先生について尋ねてみました。
そしたら、「クロダ先生は金管楽器の先生で、木管楽器は一切経験ないんだ。ただ、理論をよくご存知だからね」
え…、木管楽器を経験されたわけじゃないんだ…
理論とは。
色んな凄い人がいるものです。